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山里亮太「NHKもどうかしちゃったんでしょうね」/Eテレ『ねほりんぱほりん』より

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バラエティ

『ねほりんぱほりん』/2016年10月5日放送・NHK Eテレ

「いまNHKがアツい」というのは、ここ数年テレビウォッチャーの間では語りぐさになっている。その中でも特に「Eテレがアツい」という噂がよく聞こえてくるようになったのは最近のことだ。記憶に新しいところでは、8月28日放送の『バリバラ』。日本テレビで愛が地球を救っているその裏で、なぜ世の中には感動を誘うような障害者像ばかりがあふれているのか、障害者を描くのに感動は必須なのか、といった問題を生放送で徹底検証してみせた。カンニング竹山、鈴木おさむなどの出演者全員が黄色いTシャツを着ているという徹底ぶりで、チャリティー番組のあり方を根底から考え直す視点を提示してみせた。

そのほかにも、洗練された短い映像でデザインというものの本質を鋭く描き出す『デザインあ』、佐藤雅彦が監修を務める自由でクリエイティブなミニ番組『0655』『2355』など、一度見るとクセになるような番組が多数潜んでいる。スポンサー無視、視聴率無視でひたすら面白い番組を作ることだけに集中できるNHKの制作環境が、多くのクリエイターの創作意欲を刺激して、傑作をどんどん生み出しているのだろう。

「NHKもどうかしちゃったんでしょうね」

そんな山里亮太の言葉から始まった新番組『ねほりんぱほりん』(NHK Eテレ)は、その言葉通り異様な番組だった。もともとは『ねほりんはほりん』という番組名で特番として何度か放送されていた。「プロ彼女」「芸能スクープ記者」などのテーマで集められた人たちが、顔を隠して人形がしゃべっているという設定で、普段は表に出せない自分たちの裏側の部分を赤裸々に語ってくれる、というもの。

私も「芸能スクープ記者」の回を見たときには驚いた。週刊誌などの芸能記者がテレビに出てきて話をすること自体は民放でも珍しくないが、そのほとんどは顔も名前も出している人が、業務に支障のない言える範囲で言えるだけのことを言う、というものばかり。ここでは、顔を隠した匿名記者が、時間をかけてじっくりと、撮られる側の芸能人に知られてはいけないはずの取材ノウハウなどをあけすけに語っていた。あの回を見た知り合いの芸能記者が「テレビで業界内の秘密をペラペラしゃべって何の得があるんだ」と憤っていたぐらいだから、たぶん相当なものだったのだろう。

その番組がなんと、この秋からレギュラーで復活した。似たような名前の番組が別にあったので、番組名を少し変えたというおまけ付き。10月5日放送の初回では「偽装キラキラ女子」がテーマ。これは、ツイッターなどのSNSで優雅な日々を送っている自分の姿を偽装して、それを更新し続けることに喜びを見いだす女性のこと。スタジオにはその女性が招かれ、MCの山里亮太とYOU(扮するねほりんとぱほりん)が話を引き出していく。

まずは彼女が偽装のために使っている手法を事細かに紹介。普段は関西に住んでいる彼女は、テレビで東京の有名なホテルの情報を見つけ、偽装のためにそこに行くことを決意。1人でラウンジに行き、そこで写真を撮り、「電通」の男性とデートしているという嘘のツイートをする。自分のプロフィール写真としてはネットで拾った美女の画像を使う。ネットで見つけた高級車の画像、高級ホテルの画像を使うこともあるが、その際には注意をしなくてはいけない。ネット上には「特定班」と呼ばれる自警団がいて、偽装を厳しく取り締まっている。彼らに写真が借り物であると悟られないため、写真を加工して元ネタが見つからないように必死で工夫したりもする。フォロワーを増やすために、わざと嫌みなことを書いて炎上を誘うこともあるというのだから、その偽装ぶりは徹底されている。

インパクトを求める民放のバラエティ番組だったらここで終わりになるところだが、この番組ではさらに「なぜそこまでするのか?」という彼女の内面の問題にも踏み込む。彼女が偽装行為に手を染めたのは「自慢をしてみたい」という気持ちがきっかけ。女性同士では普段、露骨に自慢話をすると嫌われてしまう。ネット上で架空の人格を作れば、そこでは好きなだけ自慢をすることができる。また、彼女は以前から容姿をからかわれることが多く、「何を言うかより誰が言うかが大事」ということを思い知らされていた。美人でハイスペックな自分を作り出すことで、自由に何でも言える場所を手に入れたかったのだ。

『ねほりんぱほりん』は、その名の通り、根掘り葉掘りゲストの話を聞き出し、最終的にはその人の隠された本心にまで踏み込んでいく。長い時間をかけてじっくり話を聞ける、間を取って待つことができる、というのがNHKの強さだ。瞬間瞬間で数字を求められる民放の番組ではなかなかこの手法は使えない。いよいよ本格的にどうかしちゃったNHK、どうぞこのまま末永くどうかしちゃっていてください。

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コラムニスト

ラリー遠田

ラリー遠田

1979年生まれ。東京大学文学部卒業。作家・ライター、お笑い評論家として執筆、講演、イベントプロデュースなど多方面で活動。主な著書に『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)がある。『ヤングアニマル』(白泉社)に連載中の漫画『イロモンガール』の原作を手がける。

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