コラム
1997年1月5日のテレビ欄(出典:『テレパル』第1号・東版)

継母・松坂慶子の「お黙りッ」、嫁・富田靖子の「勝ったようなもの」に挟まれて中村橋之助が奮起~1997年『NHK大河ドラマ「毛利元就」』より/懐かし番組表

懐かし
1997年1月5日のテレビ欄(出典:『テレパル』第1号・東版)

地上デジタル放送化に伴い、テレビ番組表というものから遠ざかってしまった人もきっと数多いだろう。WEBメディア『テレビPABLO』では、そんな大人のためにかつての番組表を紐解きながらタイムトリップをお届けしたい。ウン年前の今日、夢中になって観ていたテレビは何だったのか? テレビ情報誌『テレパル』(小学館刊)の番組表と共に、当時の世相を振り返ってみよう――今日は1997年1月5日にタイムスリップ。

20年前の1997年のトピックといえば、神戸で起きた“酒鬼薔薇聖斗”による凄惨な事件があったり、金融機関の経営破綻が相次いだりと、世紀末に向かって暗いニュースが相次いだ。世界に目を向けると8月31日にダイアナ英皇太子妃が交通事故死、9月6日にマザー・テレサの訃報が世界を駆け巡る。

そんな中、10月には安室奈美恵の電撃入籍、11月には1998年フランスで行われるサッカーW杯への出場が決まるという「ジョホールバルの歓喜」があった。テレビの世界では、アニメ『ポケットモンスター』(テレビ東京)、ドラマ『踊る大捜査線』(フジテレビ)といった21世紀に続くコンテンツが生まれた年でもある。

20年前の今日、1997年1月5日は日曜日。『テレパル』番組表からは、NHK総合19時20分に目を留める。ちょうど子に日に始まったNHK大河ドラマ『毛利元就』だ。前年の大河ドラマ『秀吉』に続き、2年連続の戦国時代もの。永井路子の『元就、そして女たち』(中央公論社)を原作に内館牧子が脚本を担当、当時の歌舞伎のホープ・中村橋之助(現・8代目中村芝翫)が主人公・毛利元就を務めた(青年時代はV6の森田剛)。

1997年1月5日『NHK大河ドラマ「毛利元就」』(NHK総合)/得意の“ドロドロ劇場”は抑え目つつ、女性キャラをしっかり立てた内館脚本

  • 『テレパル』1997年第1号・東版の表紙
  • 『毛利元就』(NHK総合)/1997年1月5日のテレビ欄(出典:『テレパル』第1号・東版)

初回冒頭、これから描く世界をこのような主旨のナレーションで説明している。

「織田信長がようやく尾張・美濃の2国を平定した頃、中国地方10か国を制覇。大内氏、尼子氏といった強大な勢力に挟まれた地域の、小さな“国人領主”からわずか数十年で中国全土を手中に入れたということは、地方の中小企業から国際的大企業になったようなもの。その事業を成し遂げた男・毛利元就は何を夢見ていたのか」。

毛利元就は「謀略に長けた稀代の智将」というイメージで語られることが多いが、史実を丹念に調べた原作に基づいたこのドラマでは、「愛妻家で、愚痴っぽく、でも必要なことはしっかりできる男」というキャラクター。

安芸の小国の国人領主・毛利本弘(西郷輝彦)の次男として生まれた小寿丸(子役・岩渕幸弘→森田剛)。幼くして母を亡くし、妻を失った悲しみから酒に走った父も酒毒で他界、父の側室で継母となった杉の方(松坂慶子)に厳しく育てられ、元服して元就(中村橋之助)となった。

元服後は毛利家当主である兄・興元(渡部篤郎)とその嫡子の相次ぐ死により、元就は跡目争いに巻き込まれていく。さらに、東の尼子経久(緒形拳)、西の大内義興(細川俊之)といった強大な勢力に挟まれた安芸は両者の戦に借り出され、困窮していた……。

緒形拳の尼子経久と細川俊之の大内義興がまるでボスキャラのように立ちはだかり、国内では桂広澄(草刈正雄)、渡辺勝(榎木孝明)、井上元兼(片岡鶴太郎)などの重臣たちの反逆があったりと、元就には厳しい局面が続く。

それを支えた女性キャラクターが鮮烈だ。松坂慶子ふんする継母の“杉の方”は終始ハイテンションで、元就が抵抗しようにも「お黙りッ!」と一喝。富田靖子が演じた“美伊の方”も強烈。敵方から嫁いだ美伊は婚礼の晩に敵意がないことを証明するために全裸になり、たじろぐ元就に平手打ち。元就あっさり崩壊……。やがては愛妻家となるのだが、このあたりのホームドラマ的な展開は、得意の“ドロドロ”とは違った手法の“内館ワールド”。

殺伐としがちな戦国の世の中で、男たちを支えた女性たちにも光を当てた永井路子と内館牧子の女性原作・脚本コンビによる大河ドラマは、女性視聴者の心もしっかりとらえた。さて、今年の大河は1月8日スタートの『おんな城主・直虎』。20年前の大河『毛利元就』が描いた時代の少し後の遠州・遠江(現在の静岡県西部)が舞台だ。のちに徳川四天王となる井伊家のお家断絶の危機に城主となった女性・井伊直虎の生涯を柴咲コウ主演で描く。脚本・森下佳子の女性ならではの描き方にも注目したい。

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ISプレス

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1982年、『テレパル』創刊準備のために編成された、テレビ局専門取材チーム。各テレビ局ごとに担当がいて、毎日テレビ局の広報や宣伝部を拠点に局内を徘徊、情報収集。その情報を元にテレパルの特集や番組表や番組紹介記事を制作していた。「その日に仕入れた情報はその日のうちに処理する」ことが宿命だったため事務所は“不夜城”となっていた。名刺に使われている「IS」の緑のロゴは、メタリックでキラキラしていて、テレビ局員の印象に残っている。

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