コラム
1992年1月9日のテレビ欄(出典:『テレパル』第1号・東版)

江口洋介と唐沢寿明の間で揺れる鈴木保奈美、追い詰められる“チョロ”~1992年『愛という名のもとに』より/懐かし番組表

懐かし
1992年1月9日のテレビ欄(出典:『テレパル』第1号・東版)

地上デジタル放送化に伴い、テレビ番組表というものから遠ざかってしまった人もきっと数多いだろう。WEBメディア『テレビPABLO』では、そんな大人のためにかつての番組表を紐解きながらタイムトリップをお届けしたい。ウン年前の今日、夢中になって観ていたテレビは何だったのか? テレビ情報誌『テレパル』(小学館刊)の番組表と共に、当時の世相を振り返ってみよう――今日は1992年1月9日にタイムスリップ。

1月ももう2週目。9日月曜の今日は“成人の日”。かつて1月15日だった“成人の日”が2000年から1月の第2月曜となって久しく、その結果今年は「1月10日からが本格始動」という人も多いだろう。今週はまだ“成人の日”が1月15日というのが当たり前であった頃、1992年の今日に遡る。景気に翳りこそ見られたらまだまだバブルの余韻があちこちに見られ、現在と比べるとずいぶん能天気な時代。テレビは娯楽の王様で、広告メディアとしても庶民の話題としても常に中心にいた。

そんな25年前の今日、1992年1月9日木曜の『テレパル』番組表からは、この日初回が放送されたフジテレビ22時『愛という名のもとに』にフォーカスを当てる。主演は鈴木保奈美。ちょうどこの1年前、1991年の1月クールの“月9”『東京ラブストーリー』でヒロインの赤名リカを演じて人気女優の座を不動にした時期だ。脚本は野島伸司。前年7月クールの“月9”『101回目のプロポーズ』で最終回の視聴率が36.7%(ビデオリサーチ関東地区調べ)をたたき出していた。

そしてプロデューサーはこの『東京ラブストーリー』と『101回目のプロポーズ』を手がけた大多亮。主演・鈴木保奈美、脚本・野島伸司、プロデュース・大多亮……フジテレビ絶頂期の象徴とも言える座組みでスタートしたのが『愛という名のもとに』だった。主題歌は大多P自ら口説いたという浜田省吾の『悲しみは雪のように』。

1992年1月9日『愛という名のもとに』(フジテレビ)/きらめく俳優に混じった中野英雄の「チョロ」こそ陰の主役

  • 『テレパル』1992年第1号・東版の表紙
  • 『愛という名のもとに』(フジテレビ)/1992年1月9日のテレビ欄(出典:『テレパル』第1号・東版)

大学のボート部の仲間が、卒業して3年後に恩師の死をきっかけに集まるところから物語は始まる。マネージャーで周囲の世話役として堅実にこなしていた藤木貴子(鈴木保奈美)は高校教師。代議士を父に持つ高月健吾(唐沢寿明)は卒業後就職した商社をやめ、政治家を目指すため父の秘書に。健吾は貴子にプロポーズしていた。

その貴子をめぐって健吾との賭けに破れて渡米、恩師の訃報を聞いて帰国したのは神野時男(江口洋介)。このほかデパート勤務の飯森則子(洞口依子)、証券マンの倉田篤(中野英雄)、区役所職員の塚原純(石橋保)、売れっ子モデルになった斎藤尚美(中島宏海)が元ボート部の“仲間”。

男4人女3人の“男女7人”は、堅実な唐沢寿明と奔放な江口洋介の間で揺れる鈴木保奈美、石橋保の子を妊娠する洞口依子、森本レオとの不倫をずるずる続ける中島宏海、営業成績に悩みフィリピン女性音ルビー・モレノに入れ上げる中野英雄……といった具合にメンバーそれぞれの恋愛感情も織り込みつつ、社会に出て日の浅い若者たちが抱える苦悩を描いた。

こうした“男女7人”の物語が進むにつれ、鮮烈な印象を放ったのが証券マン・倉田篤だった。あだ名は「チョロ」。唐沢寿明、江口洋介、石橋保というタイプの違う“シュッとしたイケメン”に混じって、ちょっと小太りの中野英雄が演じた「チョロ」は、生真面目で要領の悪いところがあり、営業成績はいつもビリ。上司からは毎日パワハラ(当時はそんな言葉はなかったが)を受ける日々。そんな「チョロ」が、フィリピンバー女性に一方的に入れあげ、横領と傷害事件を起こしてしまう。

追い詰められた「チョロ」は自死の道を選ぶのだが、最後に、大学時代から片思いしていた貴子にこんな言葉を残す。

「俺…、卒業して、社会に出るのが怖かった……。けど、今は………、社会から出るのが怖い」

社会に出て1年目は無我夢中。自分の働きでお金を稼ぐことに精一杯。それが2年、3年と社会の仕組みがわかってくるにつれて感じる居心地の悪さと、もう戻れないという気持ち。当時、高校や大学、専門学校などを卒業して社会に出て間もないヤングビジネスパーソンにとって、あまりにも身にしみるセリフだ。

ドラマから四半世紀経った今でも、どこかに必ず「チョロ」のような若者がいる。きらめく仲間がいても救えなかった「チョロ」の苦悩を救う手立ては、いったいどこにあるのだろう。

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コラムニスト

亀井徳明

亀井徳明

『テレパル』創刊準備のために編成された、テレビ局専門取材チーム「ISプレス」の元メンバー。各テレビ局ごとに担当がおり、毎日テレビ局の広報や宣伝部を拠点に局内を徘徊、情報収集。「その日に仕入れた情報はその日のうちに処理する」ことが宿命だったため事務所は“不夜城”となっていた。「テレビPABLO」では、その頃の経験に基づいた「懐かし番組」などを執筆中。現在はフリーで活動している。

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