コラム

ラリー遠田の"テレビのひとコマ"

後藤輝基「誰かがやらなあかんねん!」/『SMAP×SMAP』後番組、『もしかしてズレてる?』

『ちょっとザワつくイメージ調査 もしかしてズレてる?』/2017年1月23日放送・フジテレビ系

フジテレビが大変だ、「SMAP」が大変だ、という2つの「大変」が重なったあげく、伝説の番組『SMAP×SMAP』は昨年末に終了した。メンバーが喪服姿で並んで頭を下げた「通夜」の回と、色とりどりの献花に囲まれて『世界に一つだけの花』というお経を読み上げた「告別式」の回で高視聴率(平均23.1%/ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録したものの、これにて葬儀はしめやかに終了。この後に「月曜10時」のバトンを受け継ぐのは、誰だって気が重いに決まっている。

でも、テレビの世界ではこういう仕事が求められることがある。いわゆる敗戦処理。負け戦になる可能性が高いことは分かっていても、それでも誰かが何かをやらないと枠は埋められないのだ。そんな中で1月23日(月)に始まった『ちょっとザワつくイメージ調査 もしかしてズレてる?』(フジテレビ系)。草一本も生えないような戦後の焼け跡にできた闇市のような番組である。

MCは後藤輝基(フットボールアワー)、DAIGO、田中みな実。うん、ちょうどいい。たとえこの番組が早々に打ち切りになってしまったとしても、大看板に傷がつく心配はない。オンエア後、ネットニュースなどではこの番組の視聴率が低かったことばかりがやたらと取り沙汰されていたが、注目すべきはその番組内容だ。どういう内容でどういう数字を取ったのか、そこに注目しなくてはいけない。敗戦処理投手の出来を確認するのも野球ファンの大事な務めである。

番組内容は、芸能人が自分自身に関するイメージ調査の結果を予想する、というもの。過去に別タイトルの特番として何度か放送されている手堅い企画ではある。冒頭で、さっそくMCの後藤に試練が与えられた。「後藤MCの月曜夜10時の新番組、見たい?見たくない?」というテーマで、100人中何人が「見たい」を選んだか、を予想することになったのだ。もちろん、あの番組のあとを受け継ぐのは大変だ、という話題になる。「『いいとも』の後の『バイキング』も数字低かったもんね」と、小木博明(おぎやはぎ)も率直な意見を述べた。でも、後藤は高らかに志を語った。

「誰かがやらなあかんねん。誰かがやらなあかんねん!」

自分に言い聞かせるように二度繰り返した。そして「でも、なんで俺やねん」と華麗にオチをつけた。後藤はその場で「70人」という強気の予想を立てた。いろんな意味で見てみたくなるはず、というのがその理由だ。実際にモニターに表示された結果は、まさかの「16人」。床が抜けて後藤は穴に落とされた。穴の底で立ちすくんだまま、茫然自失の表情で「誰でもええから抱き締めてくれ」とつぶやいた。

大事な新番組のオープニングで、ここまでの辱めを受けたMCがかつて存在しただろうか? 「誰かがやらなあかんねん」と力強く決意した男が、数分後に国民からはっきりと否定されてしまう結果となった。これは、後藤の体を張った捨て身の自虐ネタであると同時に、フジテレビ(制作はカンテレだが)の壮大な自虐ネタでもある。「みんな、俺のこと敗戦処理だと思ってるんでしょ? はいはい、自分でも分かってますよ」という恐ろしく後ろ向きな視聴者へのメッセージだ。

でも、個人的にはそれでいい、と思う。バラエティ番組ではお手軽なウソは通用しない。多少キツくてもいいから容赦なく本音を出してくれた方が視聴者としては楽しめる。実際、この番組の出来は数字ほど悪いものではなかった。その後に行われたメインの企画も、「鈴木奈々vs藤田ニコル」「トレンディエンジェル斎藤vsカズレーザー」のような申し分のない題材だったし、実際それなりに盛り上がっていた。

アメリカ大統領も原発の除染作業員も、誰だってやりたくはないけれど誰かがやらなくてはいけない。世の中には“ジョーカー”が確実に回っていて、どこかの誰かはババを引かされると決まっている。でも、伝説の番組のあとを引き継いだ『もしかしてズレてる?』は、そんなにズレてはいなかった。気負いすぎることもなく、守りに入りすぎることもなく、ちょうどいいラインを攻めていたと思う。この枠にはこの枠なりのプロの技があるのだ。

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コラムニスト

ラリー遠田

ラリー遠田

1979年生まれ。東京大学文学部卒業。作家・ライター、お笑い評論家として執筆、講演、イベントプロデュースなど多方面で活動。主な著書に『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)がある。『ヤングアニマル』(白泉社)に連載中の漫画『イロモンガール』の原作を手がける。

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