コラム

ラリー遠田の"テレビのひとコマ"

川村エミコ「TENGA夫人です」

『女芸人!春の決起集会2016』/2016年5月2日放送・日本テレビ

現在、テレビに多くの芸人が出るのは当たり前になっている。そして、ここ数年は特に、女芸人の活躍が今まで以上に目立つようになってきている。

この春から『スッキリ!!』のサブMCを務めることになった近藤春菜、NHKの朝ドラ『あさが来た』に出演して女優としての評価もうなぎ上りの友近、順調に仕事を増やしつつある若手注目株の横澤夏子など、個々の芸人が活躍しているのはもちろん、ダイエット、グルメ、恋愛などの企画でも女芸人の需要は多い。いつのまにか彼女たちはテレビの中心に近いところにいた。

「芸人」というカテゴリーの中では、女芸人はいまだに少数派ではあるのだが、「テレビタレント」というカテゴリーの中では、女芸人の重要度は年々増すばかりだ。ただ、それでも、女芸人が番組の中心を占めることはそれほど多くはない。現在でも、MCを任されるのはほとんどが男性だ。

そんな女芸人だけを集めた、珍しい形の番組があった。2016年5月2日放送の『女芸人!春の決起集会2016』だ。ここでは、大久保佳代子、光浦靖子といった有名どころはもちろん、駆け出しの若手から関西勢まで、28人の今をときめく女芸人が派閥ごとに分かれて登場。奔放なトークを展開していた。進行役として小籔千豊が声だけで出演していたものの、番組のメインはあくまでもスタジオにいる女芸人。彼女たちだけで行われたこの番組には独特の味わいがあった。

男芸人同士であれば、先輩が後輩を、より器用な者がより不器用な者を容赦なくイジって笑いのめす、という光景が展開されることが多い。だが、女芸人にはそれがない。先輩に過剰に気を使ったり、上の人が強引に場を仕切ったりするようなこともなかった。

なぜかというと、お笑いの世界では、女芸人はマイノリティだからだ。一般社会以上に男性の立場が強いお笑いの世界では、女芸人同士は助け合うしかない。その中で足を引っ張り合ったり、序列を作ったりすることが馴染まない。

それどころか、彼女たちはお笑い界のマイノリティとして、お互いが仕事の上で普段感じている痛みや苦しみを理解し合うことができる。それが絆を生む。その信頼関係が根底にあるので、この番組では終始どこか和気あいあいとした穏やかな空気が流れていた。

友近は「結婚発表記者会見の藤原紀香」という新作ものまねを見せる。大久保は最近胸が大きくなったと指摘されて「私、乳首のポテンシャルがすごいのよ」と勝ち誇る。春菜は「ステラおばさんのクッキー」の永久無料券をもらったというエピソードを披露。

そんな温かい空気の中で、たんぽぽの川村エミコも、株式会社TENGAの社長と交際中という大ネタを引っさげてトークを展開していた。興味津々な女芸人たちの視線を浴びながら、川村は遠慮がちに、でも堂々と「TENGA夫人です」と交際宣言。そして、夜の営みについても「いろいろ教わってます」と言ってのけた。これを単なる下ネタとして処理せず、「へえ~」と受け入れる空気になっていたのが良かった。

男芸人がMCだったら、なかなかこういう雰囲気にはならなかっただろう。男性MCはひとつひとつの話題にきっちりオチを付けて、次の話題に移ろうとする。進行が計算可能になる。その中で、少数派の女芸人は、芸人といえども受け身の構えになることが多い。何か話を振られたときに返す準備はあるものの、自分からあまりズケズケとものを言う感じにはならない。

ただ、それと比べて、この番組は妙にまったりしていた。まるで本当の女子会のような、ざっくばらんで飾らない、ゆったりした時間が流れていた。女芸人という素材の生かし方にはまだまだ可能性がありそうだ。

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コラムニスト

ラリー遠田

ラリー遠田

1979年生まれ。東京大学文学部卒業。作家・ライター、お笑い評論家として執筆、講演、イベントプロデュースなど多方面で活動。主な著書に『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)がある。『ヤングアニマル』(白泉社)に連載中の漫画『イロモンガール』の原作を手がける。

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