コラム

ラリー遠田の"テレビのひとコマ"

サンシャイン池崎「しばらく来たくない」/ハイテンション芸人のジャスティスな解答…『なら≒デキ』

『なら≒デキ』/2017年3月23日放送・テレビ朝日系

「今年ブレークした芸人は?」と言われたら、ブルゾンちえみ、みやぞんなど、何組かの芸人の顔が思い浮かぶ。しかし、その中で「サンシャイン池崎」だけはどこか別格の存在のような気がする。サンシャイン池崎の名前を呼ぶとき、彼のことを思い浮かべるとき、人は思わず苦笑せずにはいられない。名前の後に(笑)を付けたくなってしまうこの感じこそが、池崎が池崎たるゆえんだ。

それを象徴していたのが、2月28日放送の『R-1ぐらんぷり2017』である。池崎はこのとき、敗者復活戦から見事に決勝に返り咲き、最終3組にまで残る健闘を見せた。決勝では2本のネタを用意しなくてはならない。そこで、誰もが予想していることが池崎の身に起こった。息切れである。1本目のネタで客席を爆笑の渦にたたき込んだ池崎だが、2本目では1本目ほどのインパクトを残すことはできなかった。それはそうだろう。相田みつをなら「池崎だもの」と書きそうな尻すぼみの戦いぶり。ネタ自体が、いや、存在自体が出オチの池崎に2本目はない。空前絶後で超絶怒濤な彼はいつでも一撃必殺なのだ。

3月23日放送の『なら≒デキ』では、そんな池崎が「サンシャイン池崎なら日本の本土・最北端の宗谷岬でも24時間ハイテンションでいられるはず」という企画に挑戦していた。14時に企画がスタート。池崎は本土最北端の碑がある場所で24時間寒さをこらえなくてはいけない。

天気は良好だが、すでに気温は氷点下。いつものタンクトップに短パン姿ではかなり厳しそうではある。オープニングでは雪原に体ごと飛び込む思い切りの良さを見せたものの、直後には寒さを隠しきれない苦悶の表情。早くも先行きが不安になる。

3時間経過後、さすがにその格好のままでは危険だということで、スタッフから上着が貸し与えられた。それでも極寒であることに変わりはない。それに、人がほとんど来ない場所なので、時間が過ぎるのが遅く感じられるというのもネックだ。最初の2~3時間が経過したあたりで「寒さも長さも全部キツいですね」と池崎が早くも音をあげ始めた。

夜にはテントを張り、その中で粘ることに。しかし、冬の北海道の天気は変わりやすい。朝方には吹雪が吹き荒れ、観光客すら寄りつかなくなってしまった。天候が回復してからようやく一般人と触れ合った池崎は、人に会うこと自体に喜びを感じているようだった。

そして、ようやく24時間が経過してチャレンジは終了した。寒さに震え、孤独に耐えながらも何とか完走。スタッフに「また来たいですか?」と尋ねられた池崎は即座に答えた。

「しばらく来たくない」

なんて正直な、ジャスティスな解答だろうか。ハイテンションでも寒いものは寒い。つらいものはつらい。飾らない言葉で率直に語るのが池崎らしい。これでチャレンジは成功かと思いきや、その後のVTRで挑戦中の池崎の素顔が明かされた。寒さに苦しみ、弱音を吐く。そして、1時間以上も沈黙している場面もあった。ということで、ハイテンションを保ちきれなかったと判定され、チャレンジは失敗に終わった。

サンシャイン池崎がなぜ多くの人の心を動かすのか? それは、彼がハイテンションのスイッチを入れる瞬間を誰もが目撃しているからだ。池崎は生まれながらのハイテンション人間ではない。ハイテンションでネタをやり抜くことを決意した普通の人間である。池崎は決して強くもなければ完璧でもない。だからこそ、多くの人に身近に感じられ、温かい目で見守る気にさせるのだろう。ネタだとかキャラだとかそんな生やさしいものではない。ほかの誰が、あの武器ひとつで世に出ていく気になるだろう。池崎の本当の強みは、あのハイテンションそのものではなく、それを振り絞って前に出てくる勇気なのだ。

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コラムニスト

ラリー遠田

ラリー遠田

1979年生まれ。東京大学文学部卒業。作家・ライター、お笑い評論家として執筆、講演、イベントプロデュースなど多方面で活動。主な著書に『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)がある。『ヤングアニマル』(白泉社)に連載中の漫画『イロモンガール』の原作を手がける。

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