コラム

ラリー遠田の"テレビのひとコマ"

中村正人「ドリカムアレルギーをなんとかしたい」/希望を唄うネガティブ…『マツコの知らない世界SP』

『マツコの知らない世界SP』/2017年4月18日放送・TBS系

どうした、ドリカム!?――私が異変に気付いたのは、2016年7月3日放送の『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)を見たときだった。この番組にゲストとして出演した「DREAMS COME TRUE」の中村正人は、ドリカムの楽曲についての制作秘話などに加えて、吉田美和に対する個人的な不満や怒りについても赤裸々に語っていたのだ。これまで明るくポジティブなイメージだけを打ち出してきたドリカムが、これほどネガティブなところをさらけ出すのは珍しいと思った。

さらに、決定打となったのが、2017年4月18日(火)放送の『マツコの知らない世界SP』(TBS系)である。ここでも中村がゲストとして登場。持ち込まれたテーマはずばり「ドリカムアレルギーをなんとかしたい」。マツコ・デラックスに代表されるように、世の中にはドリカムのキャラクターや音楽に生理的に違和感を感じている人たちがいる。そういう人に向けてドリカムのことをもっと知ってもらいたい、ドリカムの音楽をもっと聴いてもらいたい、というのが中村の狙いだった。中村が登場してすぐに、マツコは慌てて釈明をした。

「私とか有吉(弘行)さんみたいな斜に構えて生きてるオカマと芸人が、幸せな人に対してね『てめぇみたいな女がドリカム聴いてんだよ!』みたいなね……」

マツコは、ドリカム自体に対して悪意はなかったのだが、ドリカムを好きな人が「幸福の象徴」であるように感じられるのだ、と言った。中村は「そこなんですよ。そこが違うんです」と答えた。

「夢は叶う」というバンド名でありながら、ドリカムのメンバー自身は決して幸福ではなかった。お互いに傷つけ合っていただけなのだ、というのが中村の主張だった。そもそも、中村自身がどちらかというと斜に構えたタイプの人間だった。そんな彼はあるとき、吉田美和という逸材に出会い、彼女の才能を世の中に広めるためにバンドを結成した。

しかし、音楽活動において、吉田と中村は常にぶつかり合っていて、解散寸前の状態にある。『関ジャム 完全燃SHOW』でも語られていたことだが、天才肌の吉田とプロデューサー気質の中村は時として意見の食い違いで激しく対立することになる。2人の間で潤滑油の役割を果たしていた西川隆宏が脱退してからは、ますます対立が深刻になっている。

実は、吉田自身は長い間、「DREAMS COME TRUE」というバンド名をあまり気に入っていなかった。吉田は決してポジティブな人間ではない、むしろダークな人間である、と中村は言う。自分は「DREAMS COME TRUE」という名前に見合うような人間ではない、というのが吉田の考えだった。そこまで言っちゃっていいのかとマツコは驚くが、中村は動じない。

「がんばってもダメなときのほうが多いじゃないですか。夢を見るのはきれいごとじゃないから」

ドリカムは、耳障りのいいきれいごとを語るだけの夢見がちなバンドではない。むしろ、メンバーが常に神経をすり減らしながら、ギリギリのバランスで成り立っている奇跡的なバンドだったのだ。中村はここまで赤裸々にぶちまけてから、最後に「ちょっとは好きになってもらえたんですか?」と問いかけた。マツコは「好きになったよ」と応じた。

ドリカムのことを特別に好きでも嫌いでもなく、「割と好き」ぐらいの感じでずっと見届けてきた私のような人間からすると、ドリカムには特定のイメージがついて回っていて、ある種のファンもアンチも同じようにそのイメージに振り回されているように見える。今回の中村とマツコの一連のやりとりは、まさにそれを真正面から主題としたものだった。

ドリカムは、世間で思われているほどポジティブなメッセージだけを振りまいているバンドではない。ドリカムの歌詞の中には、後ろ向きでダークな気持ちを歌ったものもたくさんある。応援ソングとして有名な『何度でも』の歌詞でさえも、その内容は「たとえ1万回失敗を重ねても、その次の1万1回目には何かが変わるかもしれない」というもの。率直に言って「そもそも1万回も失敗したくないよ!」というのが普通の人の感覚ではないだろうか。ここで語られていることはもはやポジティブなのかネガティブなのかもよく分からない。絶望と希望の間で激しく揺れ動くダイナミックな心の動きを描く吉田美和の歌詞には、一筋縄ではいかないものを感じる。

マツコも語っていたことだが、いわゆる「ドリカムアレルギー」の人が本当に違和感を感じている対象は、ドリカム自体ではなく、ドリカムの楽曲を「お手軽なポジティブソング」として消費している一部のファンなのだ。

自分たちの中でドリカムのイメージを勝手に作り上げて、仁義なき戦いを繰り広げるファンとアンチ。そんな構図を見るに見かねて「そういうことじゃないんだよ」と裏側を語り始めた中村は、やはりプロデューサーとしてのバランス感覚に優れた人間だなあ、とつくづく思う。

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コメント
  • Kaori @wmmw029kao

    解散の危機だのケンカだのは昔からテレビで喋ってますよ。いきなりこんなこと言い出した訳ではない。中村正人「ドリカムアレルギーをなんとかしたい」/希望を唄うネガティブ…『マツコの知らない世界SP』 https://t.co/jsXnRXQG3r

  • ラリー遠田 @owawriter

    RT @televi_pablo: 【テレビのひとコマ】中村正人「ドリカムアレルギーをなんとかしたい」/希望を唄うネガティブ…『マツコの知らない世界SP』 https://t.co/DWwP3k0LAS #マツコの知らない世界 #ドリカムアレルギー #中村正人 #マツコ・デラッ…

  • naoko @naoko_moonlit

    「わりと好き」なスタンスだから書ける記事だなと感じました>中村正人「ドリカムアレルギーをなんとかしたい」/希望を唄うネガティブ…『マツコの知らない世界SP』 https://t.co/JlT9OPXtCL

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ラリー遠田

ラリー遠田

1979年生まれ。東京大学文学部卒業。作家・ライター、お笑い評論家として執筆、講演、イベントプロデュースなど多方面で活動。主な著書に『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)がある。『ヤングアニマル』(白泉社)に連載中の漫画『イロモンガール』の原作を手がける。

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