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ラリー遠田の"テレビのひとコマ"

アキラ100%「あんまりヘラヘラ笑わないでもらっていいですか」/ドッキリで改めて浮き彫りになったこと…『金曜ロンドンハーツ』

『金曜ロンドンハーツ』/2017年4月28日放送・テレビ朝日系

北朝鮮からミサイルが飛んでくるとかこないとかで国民全体がドキドキしているこの日本で、別の意味で視聴者をドキドキさせているのがアキラ100%だ。お盆で股間を隠すというシンプルすぎる芸で『R-1ぐらんぷり』を制した彼は、その後もテレビに出るたびに視聴者に多大なる緊張と不安とほんのちょっとの期待をもたらしてくれる。

4月28日放送の『金曜ロンドンハーツ』では、アキラ100%、ブルゾンちえみ、サンシャイン池崎という「今一番売れてる3人」の素顔をドッキリで検証するという企画が行われていた。外国人好きを公言するブルゾンには、街頭で外国人にナンパされたらどうなるのか、というドッキリが仕掛けられた。イケメン外国人2人に言い寄られて、実にあっさりとLINEの連絡先交換を受け入れていた。さすがは「探さない、待つの」を信条とするブルゾン。異性への過剰な警戒心を持つこともなく、ナンパも堂々と受けて立つところに「キャリアウーマン」の余裕が感じられた。

サンシャイン池崎は、仕掛け人の大友康平が自分のことを嫌っていると聞かされた状態で収録に挑み、どんなに苦言を呈されても精一杯のハイテンションを貫いていた。大友があからさまに不機嫌な態度を見せて、場の空気が凍り付いている中で、池崎に出されるカンペには非情にも「イエーイ」の文字。その指示に従ってやや抑え気味ながらも「イエーイ」と叫んでみせた池崎は、芸人として空前絶後に男前だった。

そして、アキラ100%には二段構えのトラップが用意されていた。まず、営業先でイベント終了後にアキラの私服がなくなってしまう。やむを得ず、彼は全裸にお盆1枚だけの状態で通用口から外に出て、楽屋まで戻ることを余儀なくされた。

これだけでも過酷なのに、翌日、さらなる悲劇が彼を襲う。スタッフが舞台直前に大事な小道具であるお盆を紛失してしまったというのだ。スタッフの報告を受けて、アキラは静かに怒りをにじませた口調で語り始めた。

「呼んでいただいて本当に申し訳ないんですけど、昨日と今日で、ちょっとあり得ないと思うんですよ」

そして、弁解をするスタッフの態度に納得がいかなかったのか、こう続けた。

「あんまりヘラヘラ笑わないでもらっていいですか」

スタッフの準備不足でお客さんを笑わせることができないという状況は、笑えないから笑わないでほしい。でも、私たち視聴者はそんなアキラの窮状を隠しカメラ越しに覗いて笑っている。なんという皮肉な光景だろうか。

でも、ここからのアキラの対応が良かった。スタッフが代用品として紙皿や卓球のラケットなどいろいろなものを用意したのだが、軽さ、大きさ、使いやすさなどを考慮して、そのすべてを却下。そして、その場にあった観葉植物の鉢受け皿に目を付けて、それを使うことにした。

覚悟を決めて舞台に上がったアキラは、いつも使っているお盆がないということを告白。鉢受け皿で何とかその場を乗り切る。そして、さっき代用品として候補に挙がっていたものを引っ張り出してきて、それを使って新しい技を披露してみせた。特に、小さいおたまで後ろから股間を隠す芸には、その場で生まれたとは思えないほどのビジュアルインパクトがあった。転んでもただでは起きない。与えられた状況で目の前にいるお客さんを楽しませることに全力を尽くす。これが芸人というものだ。

そして、そんなアキラの熱意に応えるべく、仕掛け人の藤本敏史が舞台に上がった。「フジモン100%」として『チョコレイト・ディスコ』の音楽に合わせてお盆芸を披露。股間でくるりとひっくり返されたお盆の裏には「ドッキリ大成功」の文字。藤本のお盆芸も鮮やかに決まり、パクリ芸人の意地を見せた形となった。

このドッキリ企画で改めて浮き彫りになったのは、お盆で股間を隠すというあのシンプルな芸の中にも、1人の人間の創意工夫が詰め込まれているということ。見えそうだけど見えない、というギリギリのバランスで成り立っているのがアキラ100%の至高の芸。それは営業先のスタッフやテレビマンなど多くの人間の協力によって支えられている。世界中が固唾を飲んで見守っている北朝鮮の乱暴で危険な「ハダカ芸」も、このまま何事もなく収束を迎えて、「ヒヤヒヤしたんじゃない?」の一言で締めくくってほしいものだ。

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コラムニスト

ラリー遠田

ラリー遠田

1979年生まれ。東京大学文学部卒業。作家・ライター、お笑い評論家として執筆、講演、イベントプロデュースなど多方面で活動。主な著書に『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)がある。『ヤングアニマル』(白泉社)に連載中の漫画『イロモンガール』の原作を手がける。

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