コラム

ラリー遠田の"テレビのひとコマ"

友寄隆英D「完全にゾンビやん」/バラエティに舞い降りた奇人ディレクターの悲劇…『陸海空 こんな時間に地球征服するなんて』

『陸海空 こんな時間に地球征服するなんて』/2017年5月2日放送・テレビ朝日系

この春に新たに始まったバラエティ番組の中でも、ひときわ異彩を放っているのが『陸海空 こんな時間に地球征服するなんて』(テレビ朝日)である。いくつかの海外ロケ部隊が編成されていて、それぞれが別々のプロジェクトで地球一周を目指すという内容。そのロケ班の中でも、友寄隆英ディレクターの存在感が際立っている。世界中の部族に会いに行く「部族アース」という企画で、「U字工事」と一緒に世界をめぐっている人物だ。

彼はディレクターでありながら自らもカメラに映り込み、現地の人とも積極的に触れ合っていく。その取材姿勢を一言で言うと「猪突猛進」。何でもやるし、何でも食べる。目の前に食べられそうな何かがあれば、食べられるかどうかを確認するよりも先に口に入れてしまう。「種は食べてはいけない」「これはまだ熟してないから食べられない」などと現地の人も引き止めようとするのだが、友寄Dは気にも留めず、何でもポイッと口に放り込む。

5月2日(火)放送回では、ペルーのシピボ族という部族の村に潜入していた。ここでも友寄Dの暴走は止まらない。熟していない状態のカムカムというフルーツを手渡されると、彼は構わず口に含んで、すぐに吐き出す。学習能力が欠落しているのかと思われるくらい、それを何度も何度も繰り返していた。さらに、部族の魚捕りに同行したときには、網で捕れたばかりの魚を生のまま食べていた。彼は満足げに笑顔を浮かべて生魚を骨ごとたいらげていたが、現地人はただ苦笑いするばかり。

そして事件は起こった。ウィトという果実に美容効果があるということを聞きつけて、友寄Dは迷わずそれを顔に塗りたくった。顔だけでなく、髪の毛や腕などを含む全身に満遍なく行き渡らせた。

しかし、その直後、通訳を通して衝撃的な事実を聞かされた。ウィトは入れ墨を入れるためのインクとしても使われるもので、肌に塗ると肌が黒く染まってしまい、どんなに洗っても落ちなくなるというのだ。

2時間後、そんな友寄Dの顔は完全に真っ黒に染まっていた。いわゆる黒人の肌の黒さとも全く違う、人工的で不気味な「黒」そのもの。あまりに異様な外見に、さすがの彼も戸惑いを隠しきれなかった。

「完全にゾンビやん」

しかも、染料が目に入って痛くて仕方がない上に、肌が焼けて熱を発している。もちろん、川の水などでいくら洗ってみても、色は全く落ちなかった。その日の夜、黒いゾンビと化した友寄Dは、カメラの前で途方に暮れていた。

「だけど、どうやって生きていこう、今後」

同行していたADに「ラッツですね」と声をかけられると、「ラッツ&スター」と答えて、おもむろに『め組のひと』を歌い始め、「めッ!」とポーズをきめた。だが、これもカラ元気だったのか、最後には神妙な面持ちで「いろいろ考えることが多い夜になりそうです」とこぼした。

『クレイジージャーニー』に代表されるような海外ロケ番組はいくつかあるが、いずれも取材対象となる場所や人物を売りにしているものが多い。だが、この企画に関してはちょっと毛色が違う。わざわざ南米まで出向いて、テレビ初公開のシピボ族という部族の集落に潜入しているのだが、VTRの軸となっているのは、取材班の一員である「友寄隆英」という奇人の生態観察だ。

彼のおかげで「未知の部族の知られざる日常に迫る」という企画の軸はブレまくり。でも、あらかじめ予定していた通りに企画が着地せず、思わぬところが広がって面白くなってしまうというのも、これはこれでとても「バラエティ的」ではある。勢いがあるバラエティ番組には、この種のドキュメント性が自然に宿ってしまうものだ。

たった1つだけ気がかりなのは、何でも食う友寄Dが、このVTRの主役であるはずの「U字工事」の2人も完全に食っていたことだ。「友寄隆英 with U」と化したロケ隊の今後から目が離せない。

オススメ記事
コメント
  • ふなっちょ @funaccyo

    友寄隆英D「完全にゾンビやん」/バラエティに舞い降りた奇人ディレクターの悲劇…『陸海空 こんな時間に地球征服するなんて』 https://t.co/es4FZ8BxBj 水曜どうでしょうと同じにおいがすると思ったぜ ナスDが、藤やんと大泉洋さんの役割かな

  • plutoatom @plutoatom

    RT @owawriter: テレビコラム書きました! #lw ――友寄隆英D「完全にゾンビやん」/バラエティに舞い降りた奇人ディレクターの悲劇…『陸海空 こんな時間に地球征服するなんて』 https://t.co/3zSZ46T0Up

  • 姉ちん@桃 @anechang_now

    RT @televi_pablo: 【テレビのひとコマ】友寄隆英D「完全にゾンビやん」/バラエティに舞い降りた奇人ディレクターの悲劇…『陸海空 こんな時間に地球征服するなんて』 https://t.co/2fZMHtFUnH #陸海空こんな時間に地球征服するなんて #友寄隆英…

もっと見る
話題の人物
コラムニスト

ラリー遠田

ラリー遠田

1979年生まれ。東京大学文学部卒業。作家・ライター、お笑い評論家として執筆、講演、イベントプロデュースなど多方面で活動。主な著書に『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)がある。『ヤングアニマル』(白泉社)に連載中の漫画『イロモンガール』の原作を手がける。

執筆記事を読む

あわせて読みたい
Recommended by A.J.A.

一覧へ戻る

ページTOP

ページTOP