コラム

ラリー遠田の"テレビのひとコマ"

重盛さと美「紳助さんに嫌われたん、お前か」/テレビ界の「外側」へ旅立った“島田紳助”という謎…『めちゃ×2イケてるッ!』

『めちゃ×2イケてるッ!』/2017年5月27日放送・フジテレビ系

重盛さと美が「島田紳助に嫌われて干されていた」と告白した、というネットニュースを見かけた。どういうことだろうと思い、オンエアされた番組内容を確認してみた。すると、想像していたのとは別の事実が浮かび上がってきた。

まずは概略を述べよう。5月27日(土)放送の『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ)では、レギュラーメンバーが一流企業の新入社員の前で心に刺さるスピーチをする、という企画が行われていた。そこで、レギュラーのひとりである重盛は、ソフトバンクの新入社員を前にして話をすることになった。十分な準備時間も与えられないままで、重盛が話し始めたのは自分の芸能界での苦労話だった。

重盛は、2007年に上京して芸能界デビューを果たした。しかし、最初は慣れない仕事に戸惑い、失敗続きだった。ある大物司会者には「お前、なんで芸能界入ったんや」「お前なんか絶対売れへんから芸能界やめろ」と罵倒されたあげく、その人の番組には出られなくなってしまった。重盛は、自分はこの世界に向いていないのではないかと思い、深く落ち込んだ。

その後、重盛は『めちゃイケ』の新メンバーオーディションに合格して、レギュラー入りを果たした。そして、2011年の『FNS27時間テレビ』で、その司会者と再び共演することになった。そのことを岡村隆史(ナインティナイン)に相談すると、岡村は「おもろいやん、おもろいやんけ」と励ましてくれた。

「すごい格好いい一味(いちみ)に入れてもらえたんだな、とそのとき思いました」

重盛は独特の言い回しで喜びを表現した。そして、自分を受け入れてくれる出演者や番組のために一生懸命がんばろうと思うようになったという。そして最後に「紳助さんに嫌われて……」と、大物司会者の名前をポロッと出していた。ここまでがオンエアされた大まかな内容である。

天然キャラの重盛が、スピーチの最後にうっかり実名を言ってしまった、というような構成になっていたが、よくよく見ると実際の話の流れはそうではなかったのではないか、と思われる。最後の場面で、重盛は実際にはこのように発言している。

「紳助さんに嫌われたん、お前か」

これは恐らく、重盛に話しかけてきた人物の口ぶりを真似たものだ。つまり、この発言の前後には、カットされた別の文脈がある。素直に考えるならば、この発言の主は岡村だろう。岡村が、重盛が紳助に嫌われているという噂を聞いて、心配して話しかけてくれた。そこで、重盛が不安を打ち明けると、岡村は温かく励ましてくれた――実際にはこういう話の流れだったのではないかと想像できる。または、重盛の身を案じた岡村以外の誰かによる発言だったのかもしれない。

つまり、紳助の名前を最後に持ってきたのは、重盛のミスではなく、番組の作り手による意図的な演出によるものだという可能性が高い。重盛は、最後にうっかり名前をバラしてしまったわけではなく、スピーチの途中でポロッと口にしていたのだろう。

ただ、ここで「紳助」の名前が出てきたこと自体は、本来ならばとりたてて騒ぐようなことではない。テレビ局も、事務所も、これを切ろうと思えば切れる立場にあったはずだからだ。あえて切らなかったし、あえて名前を伏せなかった。いろいろな要素を考慮した上で、これがオンエアの素材として残り、こういう形で世に出ることになったわけだ。

そのことの意味をあれこれ詮索することはできるが、どう語ってもすべては仮説ということになってしまう。ただ、重盛のスピーチから伝わってきたのは、『めちゃイケ』という番組に昔から根付いている独特の「仲間意識」である。『めちゃイケ』のスタッフ及び出演者にはほかの番組にはないような強い連帯感がある。そして、その価値観のもとで物事を「内側」と「外側」に分けたとき、紳助は「外側」に位置する存在だった、というだけのことだろう。例えば、かつてレギュラーだった「極楽とんぼ」の山本圭壱は現在、『めちゃイケ』の内側ではあるけれど、フジテレビの外側にあるのかもしれない。

紳助は、重盛と共演した『FNS27時間テレビ』の1カ月後に、記者会見を開いて芸能界引退を発表した。『めちゃイケ』の外からフジテレビの外へ、そして芸能界の外側へと旅立ってしまった。

そんな紳助とはいったい何者だったのか? そのことはいまだにはっきりと総括されてはいない。なぜなら、各局のゴールデンタイムにレギュラー番組を持ち、一世を風靡した存在でありながら、その引退後、彼が抜けた穴はあまりにもスムーズに埋まってしまったからだ。

まるで初めから何もなかったかのように、紳助のいないテレビ界は通常営業で回っている。「代わりはいくらでもいる」という一般論は、下っ端のタレントに限った話ではない。あの紳助ですら、日々入れ替わるパズルの1ピースにすぎなかったのだ。

私は、単純な「紳助待望論」と「紳助不要論」のどちらも支持するつもりはない。ただ、紳助が外側に追いやられたことで、彼が体現していた「ドス黒い何か」の正体はますますつかみづらくなっている、とは言える。地上波テレビが「ギリギリでいつも生きていたい」という人を排除していくと、「リアル」を手に入れることができなくなる。紳助という墜ちていった巨星の実像(リアル・フェイス)は、いまだにつかめないままだ。

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コメント
  • ありす @alice_kobe

    ここだけ→ “「代わりはいくらでもいる」あの紳助ですら、日々入れ替わるパズルの1ピースにすぎなかったのだ” ◆重盛さと美「紳助さんに嫌われたん、お前か」/テレビ界の「外側」へ旅立った“島田紳助”という謎…『めちゃ×2イケてるッ!』 https://t.co/CTtmomo1Dx

  • わいにゃん @wai74

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  • 若狹 眞礼城 @marekingu

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コラムニスト

ラリー遠田

ラリー遠田

1979年生まれ。東京大学文学部卒業。作家・ライター、お笑い評論家として執筆、講演、イベントプロデュースなど多方面で活動。主な著書に『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)がある。『ヤングアニマル』(白泉社)に連載中の漫画『イロモンガール』の原作を手がける。

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