コラム

ラリー遠田の"テレビのひとコマ"

品川祐「みんなのそれぞれの欠点を集めたのが俺だから」/“嫌われ芸人”が彷徨う地獄…『金曜★ロンドンハーツ』

『金曜★ロンドンハーツ』/2017年6月16日放送・テレビ朝日系

近年、日本の芸能界では、薬物汚染が深刻な問題になっている。年に何度かは芸能人や元芸能人や業界関係者が違法薬物の所持などで逮捕され、世間を騒がせている。

薬物には合法のものと非合法のものがある。非合法のものの中には、人生を棒に振ってしまう事態になりかねないほど依存性が強いものも多い。そんな中で、合法ではあるが覚せい剤並みの依存性を持っている危険なドラッグがお笑い界に密かに蔓延している。それは「嫌われキャラ」というドラッグである。

本来、テレビに出るタレントの大半は、有名になりたい、金持ちになりたい、人から好かれたい、といった純粋な欲望を原動力にして芸能活動を続けている。誰もができるだけ多くの人に好かれたいし、愛されたい。そして、芸能の世界でひと山当てることができれば、その望みは叶えられる。

ところが、タレントの中にはごく稀に「嫌われ者」が生まれてしまう。不思議なことに、テレビに出れば出るほど、しゃべればしゃべるほど、彼らはより多くの人に嫌われていく。嫌われているという事実は大抵の場合、サラリと見過ごされているのだが、「嫌われ芸人」だけは話が別だ。自分の身に降りかかるすべてのことを笑いに変えることを宿命づけられている芸人たちは、時として自分が嫌われているという事実を突きつけられ、それに向き合わざるを得なくなる。笑いの神の前にひざまずく笑いの奴隷。彼らはあらゆる方法でそのプライドをへし折られ、心を引き裂かれ、お笑い遊戯の人身御供となる。

そんな「嫌われ芸人」の不動のツートップと言えば、西野亮廣(キングコング)と品川祐(品川庄司)であることに異存はないだろう。彼らが特別なのは、ナルシストキャラの井上裕介(NON STYLE)、噛みつきキャラの村本大輔(ウーマンラッシュアワー)などとは違って、好きで嫌われているわけではない、ということだ。嫌われても仕方がないようなキャラクターをあえて身にまとい、その結果として嫌われているわけではなく、自然体で嫌悪の目を向けられている。そこには歴然とした「才能の壁」がある。嫌われ芸人界のメッシとロナウド。ピッチに立つだけで見る者を魅了する彼らの右に並ぶ者はいない。

6月16日(金)放送の『金曜★ロンドンハーツ』(テレビ朝日)では、「どっちが女性に嫌われてる?GP」という企画が行われた。男性芸人たちが2チームに分かれて、1人ずつ対戦して、「一般女性に嫌われてるランキング」でより上位に入っている方が勝ち、というもの。参加芸人たちは有吉弘行チームと矢作兼チームに分けられ、品川は矢作チームに属していた。ちなみに西野は今回は参戦せず。

より嫌われていることを競う企画というだけあって、品川は生き生きとしている。堂々とした立ち振る舞いで王者の風格を漂わせている。最初から「負ける気がしない」と自信満々。この日の品川は絶好調で、「低好感度」と「コメント能力」の両方を持ちあわせている彼ならではの名言を連発していた。

「俺、今日は自信あるから、小声でしかしゃべってない。今日は声張らなくても映るなって分かってるんで」

「みんな代名詞があるでしょ。『気持ち悪い』とか『生理的に』とか『ハゲてる』とかね。俺なんかもう塩味だけだから」

すっかり開き直った品川は、嫌われ芸人という役割をまっとうする。そして、有吉がニヤニヤしながら悪意たっぷりに「でも、なんか最近、品川くん、いい噂聞くよな」と仕掛けると、すかさず矢作が「聞いたことねえわ! あいつのいい噂なんか聞いたことねえわ!」と応じた。嫌われが高じて、イジられ方もいちいち手が込んでいる。

そして、最終戦で有吉チームは「アンガールズ」の田中卓志を投入した。対する矢作チームでこれを迎え撃つのは、最強の切り札・品川祐である。品川は余裕の表情。矢作チームの面々が品川の肩や脚をもみほぐし、ウォーミングアップをしている。ここで品川が決めの一言。

「みんなのそれぞれの欠点を集めたのが俺だから」

あらゆる人間の欠点を1カ所に集めたとき、そこに「品川祐」というモンスターが生まれる。まさに悪の元気玉。職人として「嫌われ芸人」を貫く覚悟のある人間にしか出てこない重みのある一撃。ちなみに、この場面で流れたナレーションの紹介文句もきちんと容赦なかったので引用しておこう。

「嫌われ芸人のレジェンド、品川祐。謙虚さゼロ。不細工で強面。キングオブ低好感度男の世の女性からの嫌われっぷりとは?」

ところが、ここまで煽りに煽っておいて、結果はまさかの30人中5位。2位に入っていた田中の後塵を拝すことになった。田中は勝負に勝ったものの好感度では負けて、打ちのめされて複雑な表情。そんな田中を慰めるように品川は力なくこう言った。

「いや、田中。5位もつらいぜ。勝ってもないし、ちゃんと嫌われてるんだよ。やだよ、5位も」

最近の品川は、自分が嫌われているということをほぼ全面的に受け入れていて、以前よりも随分しおらしくなったように見える。ただ、個人的には、その卑屈な態度にむしろ引っかかりを感じてしまう。それはそれで物足りなさを感じてイラッとしてしまうようなところもある。あれ? でも、イラッとして嫌いになるなら嫌われ芸人としてはむしろそれが正解なのだろうか? 何だかよく分からなくなってきた。

ともあれ、品川にはいつまでも品川でいてほしい。ひな壇を支配し、ベストセラー小説を世に送り出し、料理本を出版し、映画監督挑戦でも話題になった、あの頃のような元気なドヤ顔をまた我々に見せてほしいのだ。

「嫌われ」に向かって思いきりアクセルを踏んだら、「そんなに圧倒的に嫌われてはいない(でもやっぱり相当嫌われている)」という結果が待ち受けていた。地獄の向こう側にあったもうひとつの地獄。低好感度の迷宮をさまよう「嫌われヒロシの一生」にはどんなエンディングが待ち受けているのだろうか。

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コラムニスト

ラリー遠田

ラリー遠田

1979年生まれ。東京大学文学部卒業。作家・ライター、お笑い評論家として執筆、講演、イベントプロデュースなど多方面で活動。主な著書に『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)がある。『ヤングアニマル』(白泉社)に連載中の漫画『イロモンガール』の原作を手がける。

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