コラム

ラリー遠田の"テレビのひとコマ"

中川家・礼二「NON STYLEとキングコング見たら疲れるでしょ」/生まれながらの生粋の“おじさん”…『チェンジ3』

『チェンジ3』/7月4日放送・テレビ朝日系

テレビに出る芸人たちがどんどん高齢化している、というのはよく言われる話だ。一昔前までは「若手芸人」というと10~20代を指していたが、今では40代でもそう呼ばれることがある。

そんな状況の中で、一周回って画期的な企画となっていたのが、7月6日に放送された『アメトーーク!』の「オジさんたち」である。博多華丸(博多華丸・大吉)、飯尾和樹(ずん)、カンニング竹山など、40代の芸人たちが集まって切実な「おじさんあるある」を披露し合うという内容。おじさんになれば体の節々が痛くなるし、視力も落ちてくるし、考え方も保守的になる。芸人たちが自らの老いと向き合い、それを何とか笑い飛ばそうとする姿が印象的だった。

その出演者の中に「中川家」の礼二を見つけて、ふと思ったことがある。この人は昔からおじさんだったのではないか。番組内でそれぞれの若い頃の映像が流される場面があった。そこで昔の礼二の姿には若さが感じられなかったのだ。そういえばリアルタイムで見ていたときの印象も同じだ。「中川家」は若手の頃から実におじさん臭い漫才をやっていて、特に礼二は見た目も芸風も言動も芸歴20年以上の大師匠のようだった。

礼二はいろいろな種類のおじさんのものまねを得意としているが、そもそも彼自身が初めからおじさんなのだ。ウザい女のものまねをする横澤夏子にもともとウザいところがあるというのと同じで、礼二にはおじさんではなかった時代がない。本人におじさんらしさがあるからこそ、おじさんネタが板についているのだ。フランスの作家であるシモーヌ・ド・ボーヴォワールの名言「人は女に生まれるのではない。女になるのだ」になぞらえて言うなら、「礼二はおじさんになるのではない。おじさんとして生まれているのだ」ということになる。

そんな彼にうってつけの企画があった。『チェンジ3』(テレビ朝日)で行われた「目指せ! 賞レースチャンピオン 兄さんにネタを見てもらおう」である。「ミキ」、「鬼越トマホーク」、「ピスタチオ」、「アイロンヘッド」、「ガンバレルーヤ」という気鋭の若手芸人たちの新ネタ映像を見て、「中川家」の2人が真剣にダメ出しをする、というもの。

「ピスタチオ」が見せたのは、2人が怪しげなキャラを演じる漫才。伊地知大樹が決め台詞を言うと音楽が流れ、それに合わせてダンスをする。ネタを見終わった礼二は落ち着いた口調で「ちょっとした『あるある』と音を入れていて、本当に早く売れたいという気持ちだけは感じる」とバッサリ。決め台詞を言ったときやダンスが終わったときに客があまりウケていないのをどういう気持ちで見ていたのか、と問いかけた。そして、「中川家」の剛は「ダンスをするならキレキレのダンスをしたほうが面白かった」と実践的なアドバイスを送った。

この手のダメ出し企画は、ネタを見る側が真剣すぎると笑えなくなるし、甘すぎると刺激が足りなくので、そのあたりのバランスが難しいのではないかと思っていたのだが、「中川家」の2人にはそんな心配は無用だった。2人は「ガチ」を面白く見せる方法を熟知している。

次に出てきた「ミキ」には、漫才の冒頭で力を抜いた感じで演じているのを見て「なんでこんなにテンション低いねん」と尋ねた。「ミキ」の亜生が「(ベテラン漫才師である)師匠たちの漫才に憧れているから」と答えると、礼二は「そんなん、早い早い」と一蹴。憧れるのは勝手だが、それを意識的に出そうとしてはいけない。今の年齢でしかできない漫才をキッチリやるべきだと告げた。その後も礼二は容赦なく彼らをぶった切る。

「ネタが細かすぎる、細かいのと大きいネタの比重が逆やねん」

「楽しそうにやってるのは分かるけども、楽しさだけでは時間が持たない。特に賞レースはそう。だからいざというとき、関西の賞レースであなた方は負けてるときがあるじゃないですか」

芸人がテレビで見せるレベルを超えているガチガチのガチダメ出し。でも、生まれながらに大師匠の風格がある礼二が言うと、それこそが面白く見えてくる。極めつけは、番組冒頭で中川家が自分たちの漫才の作り方について語った場面。彼らは剛が中心になってネタを作っているが、あまり何度も練習せず、あえて遊びの部分をたくさん残しておくのだという。

「緻密にやると疲れる。例えば、NON STYLEとキングコング見たら疲れるでしょ」

なんと、「疲れる」の主語は自分たちではなく観客のことだった。サラッと他のコンビ名を出して説明をするところがいい。その迷いのなさが頼もしく、面白い。

子供の頃からおじさん顔だった男が、いざ本当のおじさんになってみると、あまり顔が変わらなくてむしろ「若い頃と変わらない」というふうに好意的に解釈されることがある。「年齢が顔に追いつく」という現象だ。「師匠」然としている礼二を見ると、ようやく年齢が芸風に追いついてきたのではないか、と感じる。「中川家」が本当に面白くなるのはここからだ。

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コラムニスト

ラリー遠田

ラリー遠田

1979年生まれ。東京大学文学部卒業。作家・ライター、お笑い評論家として執筆、講演、イベントプロデュースなど多方面で活動。主な著書に『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)がある。『ヤングアニマル』(白泉社)に連載中の漫画『イロモンガール』の原作を手がける。

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